ピンク色の部屋を後にした四人はピンクの部屋の隣の部屋の前に集まる。
次はここを調べようと敦が扉を開けると中は寝室でダブルベッドと三面鏡が目立つ部屋だった。
部屋の中に入り各々気になる場所を触る。
敦は棚。姫はベッドの下。さつきは三面鏡。信頼はベッドの周りを見て回る。
しかしこれと言って気になるものはなく四人は寝室を後にした。
廊下に戻ると次の部屋はまっすぐ進んだ先に一つと左の道へと続く曲がり角があった。
四人は道なりに進み曲がり角と真正面にある部屋の前までたどり着く。
扉の横にはまた別の部屋が二つ。
そして曲がり角の真ん中にも扉があり合計四つの部屋が敦達の前に現れ四人は最初にどの部屋を見ようか
悩む。
「まあ最初は目の前のここにするとして次はどうしようか?」
敦が三人に問い掛けると姫が答える。
「この扉側の三つを順番に見て最後に反対の一つ見るのがストレートじゃね?」
「ひ、ひめちゃん、と、お、なじ、で、す」
俯きながらさつきも姫の意見に同意すると敦は信頼を見る。
特に反対意見も無かった為信頼も頷くと「決まりだね」と敦が笑い目の前の扉を開ける。
中は広いトイレで奥に収納棚が三つと中に洗面台もあり全体的に白と金で構成された高級ホテルの様な
トイレだった。
姫が中に入り奥の収納棚の一つを開けると中にはトイレットペーパー、別の棚にはタオル、最後の棚には
生理用品が沢山収納されていた。
「凄いいいトイレじゃん」
姫はそう言いながら廊下へと戻ってくると敦は「次に行こうか?」と三人に問い掛け三人は各々同意する。
トイレの横の部屋に移動すると扉はガラスでできており中の様子がうかがえた。
正確には中ではなく外。
トイレの横はバルコニーになっていて高級感のある白い机が一つと椅子が三つ。
そこに座るであろう人を陽ざしから守る為の大きなパラソルが机の横にある。
バルコニーから見える外の景色は森が続いており空は曇り空でここがどこなのかはわからなかった。
そのまま三つ目の扉の前まで進むと扉を開ける。
中は脱衣所で洗濯機と脱衣カゴが置いてあり奥に磨りガラスの扉があり恐らく浴室だろうと全員が考える。
敦が中に入ると姫も続けて脱衣所の中へ入る。
さつきは洗濯機を見ながら中に入る。
「わ、たしの、家、こんな、かっこいい、洗濯機、じゃ、ないな、いいな」
ドラム式洗濯機を見つめながら目を輝かせるさつき。
そんなさつきの前に姫は立つと洗濯機の扉を開いた。
中には白い布が入っており姫はそれを触る。
洗濯自体は終わっているのかその布は渇いており姫は布を取り出すとベッドのシーツなのか大きな白い布
が出てくる。
「高級ホテルっぽくてうらやま」
姫が言うとさつきも「そ、うだね」と笑う。
いつものメモを書きとる作業を終えた敦は磨りガラスの扉を開くと中は浴槽とシャワー、シャンプー等の
ボトルが置かれた金色のシャワーラックのみの狭い浴室だった。
「思ったより狭いね」
敦が言うと姫が浴室に入る。
「せっま!今までの高級感どこいったし」
姫は残念そうな表情をしながらすぐに浴室から出る。
どの位狭いのかと気になった信頼も脱衣所に足を踏み入れ浴室へと向かい中へ入る。
今までの部屋はとても広かったがこの浴室はそれの半分も無い程狭く信頼は中に入るとシャワーが取り
付けられている方の壁に手を置いた。その時。
身体が前に傾くのと同時に岩が崩れるような音が響く。
信頼が床へと倒れ込むと数個崩れた小さな壁の破片が背中に当たる。
「信頼くん!」
敦が信頼の元へ駆け寄りしゃがむと信頼の背に軽く触れた。
「大丈夫?この辺り痛くない?」
「 。」
思わず出ない声で平気ですと返事を返すがそれが敦にわかるわけも無く敦は信頼をゆっくりと起こした。
「大丈夫かい?」
心配そうに聞いてくる敦に信頼は再び大丈夫ですと口で言おうとするが声が出ずそれに気がついた信頼は
手に口を当て俯くと落としてスマホを取り電源を入れてメモ帳アプリを起動すると「大丈夫です」と打ち
敦に見せた。
敦は安心した表情を見せ息を吐くとさつきと姫も浴室に入ってくる。
「信頼、く、ん!大、丈夫?」
「なにがあったし!」
慌てて二人は信頼の元へ駆け寄ると信頼は先ほど打った文字を二人に見せそれを見た二人も息を吐いた。
「信頼くん、隠し部屋だよ凄いね!」
敦がそう言うとメモ帳にこの部屋の事を描き込む。
「でも怪我が無くて本当によかったよ。痛かったらすぐに言うんだよ」
敦は信頼に手を出すと信頼は頷きその手をとり一緒に立ち上がった。
「口無しお前むちゃすんなしー」
「 ?」
口無し?と思わず突っ込もうと再び口を動かすが声は出ない。
「うん、やっぱ口無しだな」
納得した表情で姫は隠し部屋から出て行く。
「ふふふ」とさつきもは笑い信頼は声が出ない所為で恥ずかしい思いをしてしまったと顔を少し赤く
染めながら俯くと敦が信頼の肩を軽く叩いた。
「大丈夫信頼くん、オレは口アリだとおもってるから!口は喋る為だけじゃないんだよ」
「そう、ですね、ご飯、食べたり、深呼吸、も」
「ね!」と敦は笑うと隠し部屋を見渡した。
大きな浴槽とシャワー、シャンプーラックがあり壁や床もとても美しい浴室だった。
「浴室を隠して浴室を作ったのか?」
敦がポツリと言うとさつきが反応する。
「浴槽、おっきい、ですね…どうして、隠し、ちゃった、んでしょ、う?」
「家主に聞かないとわからないなあ」
敦はそう返し天井を見上げ言った。
「はやくオレ達をだしてくださーい」
「ふふふ」と敦の言葉にさつきは笑うと隠し部屋から出て行く。
「信頼くん、次行こうか」
敦が言うと信頼は頷き隠し浴室を出て浴室から脱衣所を通り廊下へと戻ってきた。
戻ってくると廊下には先に出ていた姫がスマホを片手に難しい顔をしておりその横でさつきは首をかしげ
ていた。
「何かあったのかい?」
敦が聞くと姫は答える。
「一瞬電波入ったんだけど…また無理になったし…」
その言葉に信頼と敦は顔を見合わせ自身の携帯をと取り出し画面を確認する。
信頼のスマホも敦の携帯電話も電波は圏外のままで二人とも画面から視線を戻した。
「わたし、のも、戻った、んです!だから、SNS、とかで、助けを、求めようって、姫ちゃんが言った
ら…また、駄目に、なっ、ちゃって」
「一瞬の出来事だったんだね」
敦は残念そうに携帯をズボンのポケットにしまうと小さく息を吐いた。
「まあ残念だけど次の部屋に行こうか」
「それも、そう、ですね」
残念がりながらもバルコニーの前の四つ目の部屋の前まで移動する。
扉の前に立ち敦が扉を開くと部屋の中には大きな厨房が広がっていた。
「家庭科室じゃん」
姫が言うとさつきも「そうだね」と共感する。
「いやあ…普通に厨房だと思うけど…」と敦が信頼を見ると信頼もそうだなと思い頷いた。
「まあ似たようなもんだよな」
姫はそう言うと厨房の中へ入ると金属額擦れる音が聞こえ顔を上にあげた。その時。
厨房の扉の横にあるラックの上から大きな金属のボウルが三つほど落ちてくる。
姫は驚いた表情をしながら慌てて廊下へと戻る。と同時にボウルが床に落ち落ちた金属の音が厨房と廊下
に響いた。
「あぶなぁ!」
姫は大声を出す姫。
「姫ちゃん!怪我はないかい?」
慌てて敦が聞くと姫は親指を上に立て「セーフ」と返すと全員息を吐いた。
「姫ちゃんごめんね、オレが最初に入って確認するべきだったよ」
敦は申し訳ないと落ち込んだ表情で言うと姫は何もなかったかのような表情で返した。
「いや、怪我無しだからセーフセーフ、ウチも次から気を付けるし」
「姫、ちゃん…よかった…」
涙目で姫を心配そうに見つめるさつきに姫は「平気だし」と返すとさつきは涙を拭い返事を返す。
そんな様子を見て自分も何かできることはないだを羽化と信頼は少し考えると思いついた事をスマホに
打つと敦の肩を叩き敦は振り返るとスマホの画面を見せた。敦は読み上げる。
「ん?ええっと、〔俺が遺書に入って様子を見ましょうか?〕いや、それはオレがやるよ
信頼くんはさっき無茶したんだから無理しなくて大丈夫だからね」
そう言って信頼の背を軽く叩く敦。
さっき無茶をしたというのはあの隠し浴室の事だろうかと信頼は考えるが何も無茶なことはしていない筈
では?と疑問に感じ再びスマホに文字を打つと敦に見せた。
〔俺なにも無茶してませんから大丈夫ですよ〕
「いや身体を張ったじゃないか!今は平気でも後から痛くなることもあるから、大人のオレに任せたまえ」
敦はそう言うと一人厨房の中に入って行ってしまう。
二人の様子を見ていたさつきが信頼に声をかけた。
「信頼くん、優しい、ん、だね…わたし、も、敦さんの、力に、なり、た、いな」
そう言うとさつきも厨房の中に入っていく。
廊下に残った信頼と姫。
先ほどは大丈夫だっただろうかとなんとなくスマホにそのことを打って姫にスマホの画面を見せた。
〔さっきは大丈夫でしたか?〕
姫は返した。
「めっちゃビビったけど平気。というか眼鏡先行って平気なのかな?」
姫は入口から中にいるさつきと敦の様子を見る。
二人は何か話をしている様だが恐らく自分も何か手伝うと話しているのだろうと先ほどのさつきの言葉
から想像すると信頼は再びスマホに文字を打ちこみ姫に見せる。
〔多分手伝いたいんですね〕
「眼鏡女の子なのに凄い勇気あんね。ウチならビビッて最初に中に入るなんてできねーわ」
先ほどまで毎回姫が最初に探索を始めていた筈なのだが…と信頼はつっこみを入れたかったがそれは
言わなくても問題ないかと思い文字を打つのを止めるとさつきが中から出てくる。
「大、丈夫、そう、だから、中、入って、大丈、夫、だって」
そう言いながらさつきは笑うと姫はすぐに厨房へと入った。
ビビッて…という件はなんだったのかと信頼は思いつつも厨房へ足を踏み入れた。
有望の中は大きなシンクやコンロがいくつも置いてあり沢山の人がここで働けそうな程大きな厨房だった。
奥には調理器具を保管するであろう棚と大きな冷蔵庫がある。
「とりあえずさっき棚は見たけどなにも落ちてきたりはしなかったよ
ただ包丁とかそういう危ないものがあったから触らないでね。危ないから」
敦はそう言うと姫が奥にある冷蔵庫に視線を向け冷蔵庫を指さした。
「あれは見たの?」
「いや、これからだよ」
敦が返事を返すと一同は冷蔵庫の前に集まった。
「今、から、ここ、見る、んです、よ、ね?」
さつきが敦に問い掛けると敦は「そうだよ」と返事を返す。
「じゃあ開けるね」
敦がそう言い冷蔵庫の扉を開けた。