廊下を歩いていき階段前へと戻ってくる。
戻ってくる途中に通っていない道を通ったが扉は一つも無く窓もなかった。
変わった家の作りだなと思いながら信頼は先ほどの出来事をスマホの文章にまとめ敦に見せた。
「え、本当かい?ここ多分どこも危険なんだろうなあ」
敦はそう言うと階段の前で座り手帳を取り出しメモをし始める。
さつきや姫も座り信頼もその場に座るとさつきが口を開いた。
「ど、うして、お部屋が、なか、った、の、かな?もった、い、ないな、って思っ、ちゃ、う、な」
「ああ、それね」
さつきの疑問に敦が反応すると姫も反応した。
「なんか家の作り変わってるっていうか。隠し部屋もあるし。なんもなかった廊下も部屋隠れてたりして」
姫はそう言いながらスマホを取り出し再び電波が入っていないかの確認をするが電波は圏外のままで姫は
小さく舌打ちえおするとスマホを床に置いた。
「簡単に言うとまだこの家は完成していないんだろうね」
敦が言うと全員が敦に注目する。敦は続けた。
「ここは多分異空間って場所って言うのは言ったよね。その異空間を作るのには時間がかかるし普通の
建築で出来るわけじゃないから色々おかしかったりするんだ。多分だけどね」
「あ、の、その、異空間って、よく、わからない、ん、です、けど」
さつきが敦に問い掛けると敦はメモ帳を閉じ腕を組むとしばらく考える。
そしてまとまったのかすっきりした表情で口を動かし始めた。
「じゃあ少し長くなるけど説明しようかな
異空間はオレ達の住む世界にはあるけどない異空間なんだ
簡単に言うと目に見えない空間って言うのが分かりやすいけど本当はそれも少し違う
目に見えないんではなくて存在しているけど本来存在していない場所なんだ
地球上には存在するはずのない精神的な世界…うーん、なんて言ったらいいのかな?
よく漫画とかで知らない場所に閉じ込められるって感じのがあると思うんだけどアレみたいなものだよ
で、この異空間は誰かが意図的に作り出した空間だと思う。
オレ以外のみんなは招待状を貰ってるよね?メールという形で
異空間に入るには三つ方法があって
一つが異空間の創造主から招待状を貰う事
二つ目が何かしらの事故で迷い込むこと
三つめは無理矢理第三者が入り口をこじ開けて不法侵入する事
オレは招待状は知り合いのをコピーしてるけど第三者だから三つ目に近いかな」
敦が一通り話し終えると姫が反応する。
「つまりこれ異世界転生物みたいなやつ?」
「んー転生はしてないし異世界ではないけどまあ雰囲気は近いかな?」
「あ、の、敦、さんの、招待状って、誰の、なん、です、か?」
さつきが敦に問い掛けると敦は「そう言えば言ってなかったっけ?」とつぶやくと答えた。
「オレの知り合いの恋人がこのメールを受信したんだ。会いたい人に会えるってね
でなんかこのメール怪しいぞ?詐欺じゃないのか?と思ったオレの知り合いがオレのところに相談して
くれてね。それで調査に来たってわけさ。まさか異空間にまた来るとは思ってなかったよ」
「またってどーゆーことだし」
姫が反応すると敦は答える。
「オレ行ったことあるんだ。異空間に。何度もね」
敦の言葉に姫はいきなり座り方を変え姿勢を正した。
「超聞きたい!興味あり」
「お、姫ちゃん信じてくれるの?嬉しいなー!」
「嘘でも面白いならウチは気にしないし」
「ひ、姫ちゃん…」
信じていないが面白がる姫の反応に敦は落ち込んだ表情をするとさつきも反応した。
「わたし、も、聞きたい、な。今、こうして、閉じ込め、られてる、し。ここを、出られる、ヒント
が、ある、かも」
「うーん話したいのは山々だけど日が暮れちゃうからそうだなあ…ココとの共通点でもあげようか」
敦はそう言うとメモ帳を軽き捲りながら話し始めた。
「一つ目は必ず創造主[ソウゾウヌシ]がいる事
オレは何個か異空間に入ったけど全てに必ず共通するのがそれ
姿や形は人であったりそうでなかったりは創造主によって変わるみたいだね
姿が無い創造主もいるみたいだよ
二つ目は世界じゃないから必ず空間の終わりがある事
これはその異空間によって狭い広いも変わってくるみたいでまるで世界の様に広い空間もあれば
小さな家位の空間もあったよ
そして三つ目は異空間を作った創造主には必ず異空間を作るきっかけがある事かな
これは知り合いに聞いたお話だけど作り出す呪文や工程を踏んで作ったり
心の問題で無意識に作ってしまったりするらしいけど必ず何かしらきっかけがあるらしいんだ
だからこの異空間も誰かが意識的か無意識かはわからないけどきっかけを持って作ってしまった異空間
だと思うよ。招待状のカゲって言うのが多分創造主じゃないかな?ところでねオレひとつ嫌な予感がする
んだよね」
「嫌、な、予感、って…?」
さつきが問うと敦は答えた。
「この空間はもしかしたら悪意で作られたものかもしれない」
「悪意って?」
姫は首をかしげると敦は続けた。
「さっきの厨房でのドアノブ…あれは明らかにオレ達に敵意を持っていたよね?
招待状を送る創造主は二つのタイプがあってね
一つは好意をもって招待状を送るタイプ
お願いすればすぐに出してもらえることが多いらしいんだ
このタイプとは会ったことがあってね。その人に色々と異空間について教えてもらったよ
二つ目が悪意をもって招待状を送るタイプ
これは招待状を直接送るのではなくその人が入れるように顔パスにする事もあるらしい
このタイプは大体が招待者へ悪意の感情を持っていて結構酷いことになるらしい
今回のここはその悪意のタイプかもしれないってオレは思ってる
まあ単純に第三者の異物であるオレを消しに来ただけかもしれないけど」
敦が話し終えると見な黙ったまま話そうとしない。
悪意のある招待状。
そんな言葉を聞けばだれもがいい気分ではないであろう。
そんな沈黙の中さつきが口を開いた。
「じゃあ、敦さん、が、一番、危な、い、ん、です、か?」
「んー…とりあえずはそれが一番いいかな。皆に被害が出ないならそれで構わないよ…てことはオレ
みんなと一緒にいたら駄目って事…?」
悲しそうに落ち込む敦。それを「大丈夫、ですよ」と言いなだめるさつき。
姫が口を開く。
「とりあえずその異空間の件あっちの人らにも説明した方がいいんじゃね?
おじさんの事はあとでみんなで意見貰えばいいじゃん。ウチらの勝手な判断でおじさんぼっちにするの
はやばい気するし。それにこういうの一番詳しいのも多分おじさんじゃん
いないと多分困るんじゃね?」
「姫ちゃん…!」
姫のフォローに明るい表情になる敦。
「まあ邪魔ならぼっちにしてもおじさん大人だし平気じゃん?」
「姫ちゃん…」
すぐの悲しい表情に戻る敦。
そのやり取りに「ふふふ」とさつきは笑った。
「よか、った、わたし、は、敦さんと、一緒、が、いいな」
「さつきちゃん!君は本当に天使だったんだね!」
「え?てん、し…?わた、し…が?」
さつきが驚いた表情で首をかしげると敦は続けた。
「だってその背中に天使の羽があるじゃないか」
さつきは自身の背を確認するとコートについている飾りの天使の羽の事だと気づき笑う。
「ふふふ、わたし、天使、目指し、てる、から、本当に、言われ、たの、初めて、嬉し、い、な」
さつきは頬に手を当て嬉しそうに笑うと敦が手を軽く叩いた。
「じゃあ信頼くんの見つけてくれた例の鍵を書斎に確かめに行こうか。ね?信頼くん」
敦が信頼に話をふると信頼は頷きスマホで文字を打つと敦に見せた。
[俺も敦さんと一緒にいた方がいいです。行きましょう]
「信頼くんも優しい…!ありがとうね」
そう言い一同は再び最初に歩いた道の理に向かって足を踏み出した。
その時。
「う、わぁあああああぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」
一階から大きな声が聞こえ一同は足を止め一階の方を見た。
「い、まの…?」
さつきは不安そうに敦を見ると敦はうなづく。
「隼人くんの声だね…様子見に行こうか」
一同はその言葉を聞き終えると転ばないように気を付けながら階段を下り一階のホールへ戻ってくると
ゆっくりと一階の廊下からかなみと麻李野そして気分が悪いのか真っ青な顔色をした隼人が麻李野の肩を
借りて歩いてくる。
敦がかなみ達の元へ駆け寄る。
「かなみちゃん、隼人くん平気かい?何があったのか教えてくれるかい?」
かなみは頷くと隼人の様子を見ながら話し始めた。
「窓際さん達と別れてからあっちの廊下を歩いたんだけど…とても長い廊下だったわ
でその廊下の先に何個が部屋があって最後に入った部屋で…」
そこまで言うとかなみは言いづらそうな表情をしてしまい麻李野が代わりに答えた。
「人の手があったの。血もいっぱい出てて…ワタシはおじいちゃんがお医者さんだったから見慣れてた
けど…はやとん耐性なかったみたい…はやとん大丈夫?」
麻李野の言葉に隼人は首を横に振った。
「じゃあ最初の庭で休ませよう。あそこならベンチもあるからね」
敦がそう言うと庭へと続く扉を開ける。
「隼人くんもう少しだから頑張れ」
敦がそう言うと隼人は小さく頷きゆっくりと麻李野と共に庭へ出て行く。
「じゃあ丁度いいから異空間についてかなみちゃんに今説明しちゃおうか
終わるまでオレ達の休憩も延長ってことで」
「わかったわ」
かなみは返事をすると敦と共に庭へ向かった。
それに続き姫も庭へ向かうと信頼も向かおうとするとさつきが信頼の服の裾を引っ張ると信頼は振り
返った。さつきは口を開く。
「信頼くん、見て、廊下の、横、扉が、増えて、る…」
さつきが指さす方を見ると探索前には見当たらなかった扉が増えてる事に気がつき信頼は驚く。
まだ未完成の空間と敦は言っていたがまさかいきなり扉が出てくるなんてと驚く。
しかしいつまでも驚いていてはいけないと信頼は首を横に振るとスマホで文字を打ちさつきに見せた。
[敦さんに報告ですね]
「うん、そう、だね」
二人も敦がいる庭へと足を進めた。